2010年11月24日
強い男
その男はやたら強くて、向かうところ敵なしであった。
彼の辞書に不戦勝の文字は無いらしく、
果たし状の場に現れなかった喧嘩相手の家にまで押しかけ、
相手をボコボコにしていたらしい。
背は、その年齢の子の平均よりも低く、見た目にもいかついところはない。
どちらかと言うと、目のくりくりした可愛い顔立ちで、喧嘩の似合うタイプではなかった。
ところが喧嘩を始めると、変身したシルバー仮面よりも派手な立ち回りで、
笛で呼ばれたマグマ大使よりも早い動作で、
羽を伸ばしたガッチャマンよりも高いジャンプでキックしていた。
小学校の頃、
デブのアキオが番長と言われていた。
小学生とは思えない巨漢ながら、廊下でバク宙ができるほど身軽な動きを見せ、
少年野球の主要メンバーとしても名を馳せるほどのスポーツマンであった。
ガタイが良く運動神経も高い、更に目立ちたがりで根性が悪いとなれば、番長の資格十分であった。
それだけでも十分なのに、モテなくて嫉妬深いとなれば、
20歳になっても小学校の番長を続けられるほどの、ブタゴリラキャラだったのだ。
ブタゴリラアキオは、よく、廊下を歩きながら、回りをタムロする男子の股間を?んでいた。
何が面白いのかよくわからないが、右手、左手を交互の伸ばして男子の股間を?んで歩いていた。
「何だ、この野郎」と、腰を引き、屈みこみながら顔を上げ、?んだ奴がアキオだとわかったトタン、
ほとんどの男子は、引きつった笑いで、「アキオ~、やめろよー」とだらしない態度に変わった。
その男は、たまたまアキオが歩く廊下に居合わせたことが無く、股間を握られたことが無かった。
それでも、アキオの股間握りの噂は伝わっていて、もしアキオが自分の股間を握ったら、
間違いなくブチ切れてしまう自分を想像して、ニヤニヤするのであった。
ところが、そのニヤニヤは違う形で現実になった。
ある日、その男が他所のクラスの前の廊下を歩いていると、教室の中が何やら騒がしい。
女子が2~3人、気味の悪いものでも見ているかのように、顔をしかめて同じ場所を睨んでいる。
その後で男子グループが数人、引き気味の青白い顔で、女子と同じ場所を見つめている。
何があったのだろうと、その男が視線の先を確認すると、
ブタゴリラアキオがスプーンを持って立っている。
何をしてるのかよくわからないまま成り行きを眺めていると、
ブタゴリラアキオは、手に持ったスプーンを一生懸命舐めている、舐めまくっている。
このブタは気持ちが悪いくらい食い意地が張ってるのか?
それにしてもそんなもんが珍しいのか?
よくわからない微妙な雰囲気に、近くにいた男子に事情を聞いてみた。
「なんだよ、あれ?」
「アキオがいきなり教室に入ってきて、レイコが給食で使ったスプーンを舐め始めたんだよ」
「レイコって、皆の憧れのあのレイコか?」
「そう、アキオも好きだったって有名さっ・・」
事情を語る男子の言葉が終わるのも待たず、
その男は素早い動作で教室に入ると、アキオの前の机の上に立ち、
スプーンを舐めながら「何だ、こいつ?」と見上げるアキオの顔をめがけ、
ガッチャマンのように高いジャンプから、ニードロップを見舞った。
スプーンと一緒に真後ろに仰け反り、スローモーションで倒れていくブタゴリラアキオ、
鼻からは白いもの、口から赤いものを出しながら、ゆっくりと巨体が沈んでいく。
さらにその男は、ブルース・リーのような表情でブタゴリラアキオの腹の上に乗っかり、
腰を屈めながら右手を伸ばし、アキオの股間強く握り締め、「あ~」と怪鳥音を漏らすのであった・・・。
いったいオレは何を書いているんだろう?
何だかわからなくなってしまったけど、アングリーな状況で締めたかったんだけどね~。
そう、この曲をアップするために。
「Neil Young」 で「Angry World」
一応、フィクションとノンフィクションのハーフ&ハーフ!
Posted by takichi at 22:34│Comments(0)
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