2010年10月24日
金環蝕

「和37年、政府系企業日本電源開発では、九州の福流川に建設するダム工事の入札準備が始まっていた。
財部総裁(永井智雄)は青木建設に、一方若松副総裁(神山繁)をはじめとする一派は竹田建設に受注させたがっていた。
それは官房長官(仲代達矢)、首相夫人(京マチ子)らの強い意向でもあった。
様々な妨害工作の末、財部総裁はついに任期半ばにして辞任、無事竹田建設に受注させる事が出来た。
竹田建設は約40億円で出来る工事を45億円で落札、差額の5億円は総裁選挙の資金として提供する。
すべてはうまくいったかに見えたが、政界のマッチポンプこと神谷直吉(三国連太郎)や闇の金融王石原三吉(宇野重吉)に知れ、決算委員会で追求される。
だが、物証を握っていた業界紙社長(高橋悦史)は、義理の弟(峰岸徹)に殺され、すべてはうやむやになる。
金環蝕とは、日食の時、月が小さくて太陽を覆い隠せなかった場合、黒い太陽の周りにほんのり金色の輪が出来る状態を言う。周りは金色の栄光に輝いて見えるが、中は真っ黒に腐っていると言う意味」
1975年の邦画、なぜかオレたちバカ高校生、5人組だか6人組だか7人組だか、忘れてしまったけど、
とにかく大量のバカが集まって、三越2階にあった沖縄東宝劇場で、バカ面を横に並べて観た映画。
サッカーバカ、野球バカ、昔バレーバカ、パーマの利かない硬質髪バカ、国際通り軟派バカ、
バイクバカ、アルバイトバカ、ヘラヘラバカ、
バカつながりだが、勉強バカだけはいなかった。
色んなバカが集まって観ようと決めた映画がこれ、「金環蝕」だった。
誰が観たいと言ったのか、「金環蝕」の意味はわかっていたのか?漢字も読めたのか?
何一つ覚えていないけど、
映画が始まって1時間もしないうちに一人、
パーマの利かない硬質髪バカが、かなりでかいイビキを掻いていた。
後のバカも皆、ほぼ全滅に近い状態だったと思うけど、
一人だけ、
オレと同じく映像に集中していた奴がいた。
映画が終わった後、震えるぐらいの興奮を覚えていたことを話し合った覚えがある。
そいつもオレと同じように勉強嫌いだったけど、自分を見つめ直し、浪人後東京に進学、
もともと好きだった映画の世界を目指し、大学の映画研究サークルに所属、
そして、夢と現実の狭間で悩んだのか、1年程度で大学を中退、
しばらく東京で生活を続けるが、更に現実的に生きるために帰郷、
帰郷後10年程度は普通に現実を生きていただろうか?
その後、死ぬまで終わることのない現実の世界と、自分の意思とがうまくコングロマリット出来ず、
心が壊れたまま現在に至る。
今でも忘れられないシーンがあり、二人でそのセリフを反復し合って更に感動を深めたものだ。
自分の生きるスタンスを決めたと言っても過言では無いそのシーンを確かめたくて、
DVDを借りて、再度「金環蝕」を観てみたのだが、
完全な記憶違いなのか、オレの思い描くようなシーンは見当たらない。
今でもはっきり、そのセリフが頭に浮かぶのだが、どこにもそんなセリフは出てこない。
オレは自分の勘違いに影響されて生きてきたのだろうか?
物証を握っている業界紙社長(高橋悦史)の存在を疎ましく思う闇の金融王石原三吉(宇野重吉)が、
出っ歯の醜い顔で、静かに、しかし激しく吐くセリフ、
「小さな一個の正義が、一番厄介なんだよ」
そのセリフを聞いた部下が、峰岸徹に高橋悦史を抹殺させる、と言う感じ。
このシーンを観てオレは、
「小さい正義になってやる」
「小さい正義で大きな悪を脅かしたい」と思った。
自分の思いと現実のギャップは誰にもあるもので、
「小さく整理され」「大きなあくびをする」オレがいる。
まだまだ夢多き十代には、スプリングスティーンの元気さが眩しかったぜ!
Badlands (Bruce Springsteen Live in Barcelona)
Posted by takichi at 21:22│Comments(0)
│USA