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2010年01月18日

無間地獄

無間地獄

無間地獄とは、

仏教で言われている八大地獄のひとつで、大罪を犯した者が落ち、絶え間ない苦しみを受ける地獄。


ネットが復活してハッピーなはずなのに、なぜ「無間地獄」の話?と思われる方もいるだろう。

リカバリー後のパソコンの基本設定をしている待ち時間や、

飛ばしてしまったウィルスソフトやフリーソフトの再インストールの間、

ずっと読んでいた文庫本が「無間地獄」だったのだ。

ほんの少し空いた時間でも読みたくなるVシネマ系小説。

アンダーグラウンドの世界を描かせたらピカイチ、

最低の人間像を描かせたらピカイチの新堂冬樹の作品。

金融会社勤務を経て、現在はコンサルティング会社を営む傍ら、

暗黒の世界を描き続けている、何とも怪しい作家。

闇金融の世界で繰り広げられる、果てしない人間の強欲レース、

逃げるろくでなし、追う人でなし、どちらも行き先は「無間地獄」でしかない。

まだ最終まで読み終えていないが、若かりし銀行員時代のお客さんのことを思い出してしまった。


銀行に入って3年目か4年目、20代のオレは融資業務に従事していた。

若年行員であることから住宅融資が中心ではあったが、

それほど多額でなければ、営業性融資も担当させられていた。

その時のお客さんで、○山工業を営む○山さん。

住宅用地購入資金の相談を受け、当初審査では自己資金も確保され、

特に基準に抵触する事項も無く、すんなり融資取引は始まった。

土地購入資金で自己資金を使い果たしているので、

住宅建築は、しばらく事業収益をストックしてからの申し込み予定であった。

が、世はバブル真っ只中、自己資金無しでも家が建てられると喧伝する業者が多数存在していた。

そんな口車に乗せられた○山さんは、「早く住宅を建築したい」とオレに相談にきた。

確かに、自己資金が乏しくても返済財源が確実であれば融資は可能であったが、

○山さんは自営業であり、収入証明の信憑性も低く、預金で補足するような取引振りもない。

当然オレは、「自己資金を確保してから建築した方が将来の不安が少ない」とアドバイスした。

それでも「念願のマイホームを早く手に入れたい」「せっかく手に入れた宅地を遊ばせたくない」、

と懇願され、担当者だけでは判断しかねると上司に相談した。

すると、銀行内部もバブル、住宅ローンや融資量のノルマが後押しして、即採択となる。

どこかに引っかかるものを感じながらも、書類上特に問題はなく住宅建築資金も手当てした。

4ヶ月~5ヶ月で無事住宅も完成し、○山さんも大喜びで、何度もオレに頭を下げた。

そして完成後間もなく、今度は、事業拡大のための融資を相談にやってきた。

「この1年、土地建物でお金が大きく動いているので、もう少し様子を見た方がいい」

とアドバイスするが、「家を新築したから、もっと頑張らないといけない」と、

旺盛な事業意欲をアピールするばかりで、若造のアドバイスに耳を貸してくれない。

仕方なくまた上司に相談するが、銀行内部のバブルは継続中で、融資ノルマは上乗せ状態、

条件付で採択となる、ごく単純な条件、「担保があればOK」。

○山さんは、親類を保証人兼担保提供者にして、条件を満たしてきた。

あまりに急いている○山さんに不安を持ちながらも、オレは手続きを進めていった。

時間が無く、銀行休業日に遠出して、保証人面談と担保実査を行い、融資を実行した。


しばらくして、1年を経たくらいだろうか、○山さんの返済が滞るようになった。

オレが電話で督促すると、平謝りで翌日には入金してきた。

毎月のように督促しなければいけない状況になり、入金も月末ギリギリになってきた。

オレの督促も徐々にキツくなってきて、

「今月は工面できそうにない」という○山さんに、

あれだけアドバイスしたのに、どうしても借りたいと言ったのは○山さんで、

無理をして貸し出したオレの立場はどうなる?的な口調で返してしまう。

すると○山さんは、平謝りで月末に入金をしてきた。


そんな督促が続いたある日の夕方、

銀行のシャッターも閉まってから、チャイムを鳴らして○山さんが入店してきた。

いつになく悲痛な面持ちの○山さんを応接間に通し、オレは、向かいのソファーに座った。

突然、○山さんはテーブルに擦るように頭を下げ、

「すいません、すいません、不渡りを出します」と言う。

20代の若造の前で深く頭を何度も何度も下げる。

驚いたオレが「どういうことですか?」と聞くと、

顔を上げ、涙をボロボロ流している。

20代の若造の前で、ボロボロ涙を流している。


○山さんはオレに義理立てし、督促がある度に資金繰りに奔走、

高利の金融屋から調達して、銀行に入金していた。

このときにオレは「貸す」だけが銀行の仕事ではないと知った。

「回収」するだけが銀行の仕事ではないと知った。

今日の話は重かったかもしれない。

http://www.youtube.com/watch?v=b0wfu3tOrtQ



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Posted by takichi at 21:14│Comments(0)USA
 
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