2011年09月05日
本店新築お祝い採用3

俺の名は松田寛、皆にはカンさんとか、カーンとかで呼ばれている。
色白で一重、オールバックで金のネックレスとかしているから、闇世界の人間によく間違われた。
現在はタクシー乗務員をやっているから、さらに闇の世界に近づいた感じがする。
こう見えても実はかなり良家の生まれでね、親父も兄貴も医者なんだよ。
兄貴に病院をやらせて、俺は事務長に収まろうという手筈で銀行を早期退職したんだけど、
その手筈は、そんな筈は無いチャンチャン、で終わってしまってさ、参っちまったよ、破綻だよ。
変な野郎の口車に乗せられて退職金を注ぎ込んだら、全額パーのアジャパーよ。
危険を感じた兄貴はさっさと引きやがるし、戸建ての住宅も、投資目的で手に入れた離島の土地も、
全てパーのアジャパーよ、一家離散だよ、まったく、元銀行員の住宅が競売だぜ、情けないよ。
でも事実だから、今更どうしようもないし、しょうがねーよ。
銀行時代は結構順調に行っててさ、昇給昇格も同期では早い方だったよ。
遊び好きなところもあったけど、別に職場に迷惑をかけるほどではないし、
ヤンキーの高校生と付き合ってたりもしたぜ。
迷惑?
そうか、淫行で捕まっちまえば名前も公表されるし、「淫行員」なんて新聞記事は洒落にならないもんね。
そんな記事、東スポぐらいだと思うけど。
まあ、誰にも知られてないし、今しか話してないから、もう時効だろう。
やっぱ、銀行、辞めなきゃ良かったかな~?
最近、銀行員って俺の天職だったんじゃないかって思ったりするんだよ。
昔、後輩と二人で有閑マダム系の色気ババアの家に集金に行ったらさ、
玄関で、俺達を見てキャンキャンキャンキャンやたら五月蝿いポメラニアンがいてさ、
色気ババアの前では「可愛いワンコだね~」なんておべんちゃらバリバリでさ、
ババアが「ちょっと待っててね、お金取ってくるから、Mちゃん!おいたしたらダメですよ」、
なんてぬかして奥に引っ込んでからだけど、
「何がMちゃんだ!」って、ボールペンで背中を刺してやったらさ、
キャイーンって尻込みしながら吼えてやんの。
「Mちゃん、どうしたの?」って慌ててババアが戻ってきてさ、
ニヤニヤしながら「どうしたんでしょうね~、Mちゃん」って誤魔化して、
ババアにわからないようにMちゃんを睨みつけてやったら、
Mちゃん、怯えた目でまた尻込みしてやがんの。
かなりわろたぜ!
お客さんに深々と頭を下げながら、下向きでベロを出しているような俺の性格って、銀行員向きじゃねっ?
それが認められて苦情処理係に抜擢されたのかな~?
毎日、意味のわかんねー苦情に頭を下げてさ、どんなにベロを出しても腸が煮えくり返ってさ、
高血圧で無理が利かない身体なのに、毎日飲まずにはやってられなくてさ、
身体壊す手前で、病院の開業話が出てきてさ、すぐに飛びついたってことよ。
仕事もできる方だったと思うし、度胸もそれなりにあったんだけど、
何だろうな~、一度ズレてしまった歯車って、再び噛み合うことはないようで、
全てが一気に狂ってしまったよ。
51歳になってしまったけど、もうひと花ってあるんだろうか?
スタイルカウンシルが流行ってた1984年入社組、
個性的な奴が多くて、面白かったな~。
同期っていいね!
Posted by takichi at 21:28│Comments(0)
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